中国の戦略(中東)

投稿者: | 2016年01月24日 09:53

サウジ、エジプト、イランを歴訪している習近平国家主席はイランでとんでもない規模の経済協力を発表しています。

総額6000億ドル。

円換算で70兆円を超える貿易を中国・イランと行うと発表しているのです。
目玉は中国製原子力発電所2基の建設ですが、それ以外にも高速鉄道・港湾インフラも入っており、詳しくは報じられていませんが、いわばこの取引は「バーター取引」になると言われており、中国は原油を受け取ることで代金支払いを受け、決済は人民元になるのではないかとも言われています。

中国側は何万人の建設労働者を送りこみ、中国国内で余っている鉄鋼・セメント等の鋼材を持ち込みますから、一切外国企業は介在できない形の協力となります。

日本のODAの無償援助の「ひもつき融資」から学んだとも言われる仕組みを中国は採用しており、このような形の経済協力を推し進めれば、中国は国内で消費できない過剰な鉄鋼・セメント等を海外協力の名の下に使えることになり、更には原油等を格安でしかも人民元建てで入手することが出来ます。

まさに一石二鳥な戦略をとっているものですが、注目するべきことは、今回の中東訪問で中国は中東ではサウジとイランという両巨頭を”傘下”におさめたことになるのです。
即ち、中国は経済問題で中東を支配においたとなるのです。

そして、実はこの動きはロシアとも連携しているのは余り知られていません。
以下の動きをご覧ください。

*16日、ロシアのラブロフ外務大臣はイランのザリーフ外務大臣をモスクワに招聘し、協議を行っています。
(詳しくは以下のイラン日本語ラジオ放送の公式発表をご覧ください)

*プーチン大統領は、18日にロシアのカタールのタミム首長を招聘し、「世界の安定という問題では、ロシアが主要な役割を果たす」との言葉を引き出し、ラブロフ外務大臣は「カタールとテロ対策の強化で合意し、具体的内容についても合意した」と発表

この中国・ロシアの一連の動きは一つの線でつながっており、ロシアと中国が密接に協議しながら動いているのが分かります。

ではアメリカは?
全く姿が見えません。

今回のイラン制裁解除を受けてイランとアメリカは友好関係を結んだと報道されていますが、以下の報道を見てそれでも友好関係を結んだと言えるでしょうか?

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≪イランとロシア≫は、地域全体の治安に関して二国間、地域協議を優先的に据えると強調し、地域の情勢不安の状況と原因を正しく認識することで、<アメリカの挑発>や、<戦争誘発の脅威>を地域から遠ざけ、持てる能力を地域の治安維持と問題解決のために利用するよう努力しています。

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これがイランの「本音」です。

今回の制裁解除がイランとしては「西側が制裁を解除するならどうぞ。我々を西側が必要としているのだから、それ相当のお金はくれるのでしょうね?」となっており、完全に足元を見られているのです。

さらにイランの「本音」が出た演説があります。

イランのロハニ大統領(国連演説)

アメリカがアフガニスタンやイラクに軍事介入せず、シオニスト(イスラエルを指します)を支持しなければ、テロリストが自らの犯罪を正当化する口実もなかった

アメリカを痛烈に批判しています。

この国連演説があったにもかかわらず、ケリー国務長官(アメリカ)が制裁を解除しているのです。
如何に西側が下手に出て、ビジネス(お金)が欲しいとなっていたかわかります。

今後、ロシア・中国は中東でそれぞれの分野で主導権を握りますが、ロシアはベネズエラにも手を伸ばしており、石油輸出国を束ねる動きをしており、ロシア主導でOPECが再構築されるかもしれませんが、このロシア主導のOPECが完成した暁には、世界は大激変を起こすことになります。

中国・ロシアはとんでもない野望を抱き、そして一歩、また一歩と前に進んでいます。
世界から撤退するアメリカに追随している日本は本当に大丈夫でしょうか?

気がつけば、日本は世界から無視され、アメリカからも捨てられていたとなるかもしれません。

<公式報道(発表)>
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イランのザリーフ外務大臣が、シリアとジュネーブ2の会議に関して地域で協議を続ける中で、ロシアの首都モスクワを訪問しました。
ザリーフ大臣は15日水曜、シリアで同国のアサド大統領、およびムアッリム外務大臣と会談後、モスクワに向かいました。

ロシア外務省はこの訪問を前に、声明を出し、「シリア問題に関するロシアとイランの立場は非常に多くの共通点があり、何よりもこの問題の平和的解決のほかに方法はないと考えていることだ」と語りました。

ロシアのラブロフ外務大臣とザリーフ大臣は、シリア問題、イランの核活動に関するジュネーブ合意の実行、ロシアとイランの関係について話し合いを行いました。

シリア問題の平和的解決を見出すというイランとロシアの立場は共通しています。こうした中、ジュネーブ2の会議にイランが参加するか否かは、シリア問題の解決においてイランがまるで非建設的な役割を果たすかのように示そうとするアメリカの立場により、今も不透明なままです。ジュネーブ2は、1月22日、スイスで開かれる予定です。

ロシアはこの会議へのイランの参加を強調していますが、アメリカ政府はこれに反対しています。

一方で、こうした問題は別として、イランの外務大臣のロシア訪問で提示された議題は多岐に渡ります。
この方向で、イランとロシアを含む6カ国の合意に関する協議は、ロシアでのザリーフ大臣の協議の中心となっています。

国連安保理常任理事国5カ国にドイツを加えた6カ国の外相は、昨年11月24日、ジュネーブで、イランと共に共同行動計画に署名し、このことはイランの核問題の解決に向けた第一歩となりました。
現在、この枠内での協力に向けた新たな下地、さらにはイランが必要とする原発の新たなプロジェクトが形作られており、ロシアは、それらの実行に関わる意向を示しています。

イランとロシアはさらに、カスピ海沿岸地域の問題において、カスピ海の新たな法体制作りに向けて努力しており、この問題は首脳レベルで追求されています。

イランとロシアは、地域における西側の軍事駐留に対しても共通の見方を持っており、アフガニスタン・イラクから中央アジア、コーカサス地方、ペルシャ湾南岸までの地域におけるアメリカ軍の駐留は、地域の脅威だとしています。

麻薬密輸対策に向けた協力、アルカイダなどのテロ対策における協力、国際分野での協力、さらには防衛、経済、産業協力が<イランとロシアの関係の指標>となっています。

一方で、これらの協力のほか、≪イランとロシア≫は、地域全体の治安に関して二国間、地域協議を優先にすえるとと強調し、地域の情勢不安の状況と原因を正しく認識することで、<アメリカの挑発>や、<戦争誘発の脅威>を地域から遠ざけ、持てる能力を地域の治安維持と問題解決のために利用するよう努力しています。

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