今、世界中で高額紙幣を廃止するべきとの意見が出てきていますが、ロイターは『現金廃止論:マネーはどこに向かうのか』というタイトルで報じています。
この記事の中では、ECBによる500ユーロ紙幣廃止論の他にサマーズ元財務長官による100ドル紙幣発行停止についても詳しく報じています。
そしてこの報道で注目するべき点は以下のところです。
『高額紙幣を廃止することと、マイナス金利政策を順調に機能させることには関連がある』
『日銀が先月マイナス金利を導入した日本では、金庫の売り上げが一年前に比べ倍増し、一万円紙幣は全紙幣の92%を占めている』
この報道の中で、元ヘッジファンドに勤めていたローズマン氏は以下のように述べています。
『投資家たちは現金廃止論から身を守るために、代わりとなるアセットクラスへの移行を一段と余儀なくされている』
『はっきり言えば、(高額紙幣の)代わりとなるような安全な資産運用先として効率的に機能するアセットクラスは殆どないに等しい』
このため、同氏は以下のように主張しているとしています。
(高額紙幣を所有する富裕層は)『銀やワイン、芸術(油絵等)、金に向かわせる』
今、世界中で最高額紙幣を廃止するべきであるという議論が沸き起こっており、アメリカでも一般国民の間で殆ど流通していない100ドル紙幣を廃止するべき(同時に、より流通していない$50紙幣も)との意見も出てきており、では日本は?となります。
日本国内に流通する紙幣は総額で100兆円余りとなっており、この90%以上が一万円紙幣となっており、1万円紙幣を廃止することで90兆円以上を「無効」にしたり「あぶり出す」ことが出来る訳です。
90兆円以上の日本銀行券を無効にすれば、これは日銀の利益になりますから、国庫納付金として税収を確保出来、現金課税をすることと同じ効果があります。
1万円紙幣の代わりに2000円紙幣と1000円紙幣だけにすれば、より管理もしやすくなるでしょうし、5万円以上の現金決済を禁止する(ヨーロッパでは導入が議論され、一部で実施されています)ことで、1万円紙幣がなくても特に問題は生じません。
今後、500ユーロ紙幣、$100紙幣、1万円紙幣が廃止されるという議論が高まれば高まる程、これら高額紙幣を退蔵している富裕層は慌てだします。
折角隠した紙幣が無効になる可能性があるからです。
今、ヨーロッパで絵画市場、特に数千万円から数億円規模の絵画が値上りし出していますが、この裏には500ユーロ紙幣廃止論があると見るのが自然ですし、金貨もアメリカ市場で引き合いが多くなってきたと言われるのも$100紙幣廃止論が背景にあるはずです。
勿論、金融危機対応もあり、今や富裕層が所有する膨大な金融資産をどう守るか躍起になってきているのです。
日本でも90兆円以上が1万円紙幣となっており、個人が所有する1万円紙幣は数十兆円にも上るとみられており1万円紙幣廃止となればこれが行き場を失いつつあると言えるのです。
何故なら、実物資産市場にはそれだけのお金を消化するだけの現物は存在しておらず、仮に価格が2倍、3倍と暴騰しましても、売り物がなければ買いたくても買えないからです。
まさに先に動いた資産家だけが保全するために、実物資産を手にすることが出来たとなるのです。
昨年のクリスティーズオークションでオークション会社の見積もりの9倍以上の価格を払って落札した作品がありましたが、これなどは世界で一点しか存在しておらず専門家がつけた価格の9倍を出さないと買えなかったのです。
それでも今の市場を見れば「安い買い物」だったと言えます。
世界中で、高額紙幣から実物資産への資金逃避が始まりつつありますが、最後に気付くのが日本人でしょうが、その時は買うものは何も残っていないはずです。
世界有数の実物資産保有会社となっています【ギャラリープレシャスグループ】でも精々対応できるのは100億円規模でありそれ以上となりますと無理だと言えます。
(100億円など、先般お知らせしました絵画2枚で600億円と比べれば微々たる金額なのです。)
高額紙幣廃止論が高まるごとに実物資産への需要が高まり実物資産を保有していないと安心出来ないという昔の時代に戻っていくことになるかも知れませんが、それを実践できる人はほんの少ししかいません。