既報のオバマ大統領のレガシー作りのためにイランとの”歴史的和解”でイラン制裁が解除されていますが、これに反対する(敵対する)勢力がイランの政権には多くおり、彼らが実質的な実権を握っているというのも「常識」となっており、今般その「常識」が表面化してきています。
毎日新聞は以下のような報道を行っています。
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イランの首都テヘランのイラン人宅で今年4月に開かれたパーティーを治安当局が強制捜査した際に、出席していた小林弘裕駐イラン大使(61)が一時、身柄を拘束され、事情聴取を受けていたことが毎日新聞の取材でわかった。国際条約が定める「外交特権」は、外交官の身体などを「不可侵」としており、捜査は異例だ。小林大使によると、「大使に対する扱いとして不適切で、イラン外務省に抗議した」という。
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イランには我々が目にする「表の政府」と宗教家が支配する「裏の政府」が混在しており、「表の政府」は政治・外交やビジネス・実利を担いますが、「裏の政府」は実利・ビジネスは「悪の根源である」としてイスラム教シーア派の教えに重きを置き、厳しく律しています。
核合意をこの「裏の政府」がどう評価していたか、殆どのマスコミは報じていませんが、極めて一部のヨーロッパのマスコミは驚くべき内容を報じていました。
『核合意は容認できない」
「表の政府」が認めたことに180度反対の意見を述べていたのでです。
これが即ち、このブログで指摘しました「核合意は茶番である」という根拠となり、このような2重の権力構造にあるイランで浮かれてビジネスをしようと思えばとんでもない事態に陥ることもあり得ます。
以前、あるヨーロッパの外交官は以下のようなことを述べていました。
『あんな意味のない合意に浮かれてビジネスをしようとする民間人がいるのか? 冷静に内容を読めばとても危険な内容となっており、
かつイランで力を持っている宗教家がこの核協議に加わっていないことが気になる。あえて加わらず、あとからどんでん返しをすることを
考えているのではないか?』
今回、発覚しました日本の特命全権大使拘束を見れば、上記の指摘も頷けますし、外交官のトップさえも拘束するイランで民間人がどう身を守るのか考える前にわかります。
ところで、このパーティーに同じく参加していましたフランス外交官幹部は拘束されずに釈放されていますが、これは外交官カードを携帯していたからとも言われていますが、果たしてそうでしょうか?
イランとフランスとの原子力分野・軍事分野での緊密な関係を見れば、初めからフランス人は拘束の対象外だったとも言えるのです。
また、拘束された小林大使は以下のような発言を行っています。
「外交官カードの不携帯が拘束につながったとは考えない」
イランが本格的に「ちゃぶ台ひっくり返し」を行うのも時間の問題でしょうが、その時、最悪の場合、イランの「表の政府」が崩壊し、「裏の政府」が実権を握り、外国人の出国を禁止するという事態もあり得ます。
日本企業のスタッフ(数百人)が拘束されると言う事態もあり得、今からいざとなった時の避難方法を考えておくべきだと言えますが、大使館や大使公邸に逃げ込むことも避難マニュアルにあるはずですが、大使が拘束される国であり意味がないのもお分かり頂けると思います。
最悪の事態を想定してイランビジネスを手掛けるべきだと言えますが、果たして日本企業にそのような芸当が出来るでしょうか?