原油価格急落とメキシコ危機

投稿者: | 2016年07月29日 08:23

原油価格がここにきて再度下落してきており、昨夜はNY市場で<1.89%安>の1バーレル$41.14となり、40ドル割れ寸前にまで売られています。
世界的景気低迷もあり、原油への需要が減ってきているためですが、アメリカでも利上げが出来ないように経済の実態はさほど良い訳ではありません。

そのような中、ファンド主導で上げてきた原油価格ですが、ここで仮に1バーレル40ドル割れとなれば、再度市場には弱気が台頭してきます。

そのような折、経営危機がささやかれている石油会社があります。
メキシコ国営石油の【ペメックス】です。
4-6月期の最終損益が<834億ペソの赤字(円換算で4600億円)>と発表されており、一年前も<846億ペソの赤字>でしたので、殆ど変らない膨大な額の赤字を計上しているのです。
民間企業であればとっくの昔に経営破たんしている額の赤字ですが、国営企業であるが故の税金が投入されて、会社は生きていますが果たして年間1兆円を超える赤字を垂れ流し続けることが出来るでしょうか?

メキシコ油田は従来から重質油が多く今の市場ニーズにはあっておらず、価格もテキサススイートより安くしないと売れません。
今後アメリカのシェール油田から軽質油が更に出てくると言われており、これらが市場を席捲すればメキシコ産原油は相当安くしませんと引き取り手はなくなりますが、そうなれば採算は更に悪化します。

重質油油田を閉鎖することにつきますが、メキシコは今や北米向け自動車産業の中心地になっており、重質油油田を閉鎖しましても特に困るということもありませんし、大気汚染が深刻化しているメキシコシティなどは却ってよいことになるかもしれません。
アメリカに自動車を輸出し、アメリカから軽質油を輸入すればよいからで、アメリカも新しいシェール油輸出先を得ることになるからです。

今後、トランプ氏が述べているメキシコ国境に壁を作ることから、壁のかわりにパイプラインを引いてアメリカから軽質油を
輸出するという論戦に変わるかもしれませんが、隣国はどこまで言っても隣国であり、これは避けて通れないのです。
善隣友好を求めるのが政治家であり、いずれメキシコともアメリカは友好関係を更に強くするはずです。
何せメキシコは多くのアメリカ人にとり安くビタミン剤を購入する場所として認識されており、無くてはならない国なのです。

お互いが「Win・Win」の関係に戻るのはこの11月の大統領選挙が終わってからになるのでしょうが、日本でもそうですが、
中国・韓国・ロシアと仲良くする方策をお互いの政治家や官僚はまず第一に考えるべきだと言えます。
嫌いだからと言って離れる訳にはいかないのですから。

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