FT紙は「摩天楼の呪い」という言い方をして中国の不動産市場について報じています。
この記事の中で、3年前に世界一高い838メートルの高層マンション・ビル群「スカイシティ」の起工式があったところが、今や魚の養魚場になっていると報じています。
世界一高いアパート(マンション)はプリンセス・タワーであり、ドバイにあり、ギネスにも登録されていますが、それを超える世界最高層のマンション・ビル建設予定だったものが、今やその土地は養魚場になっていると報じているのです。それでも不良債権化していないのです。
ところで他の報告書によれば、2015年に建設された高さ200メートル以上の超高層ビルは世界全体で過去最高の106棟となり、中でも62棟も建設された中国は8年連続で超高層ビル数トップとなっており、今年2016年の超高層ビル世界トップ10のうち6棟が中国のビルになるとの予測もあります。
ところで都市別ランキングでは意外な都市が登場しています。
<新たに建設された超高層ビル数の都市別ランキング>
1位 : 7棟 ジャカルタ(インドネシア)
2位 : 5棟 南京・南寧、深セン
ジャカルタで不動産バブルが発生していると言われてきていましたが、世界一になるとは思いもよりませんでした。
今後不動産バブル崩壊のドミノ倒しがアジアで見られるかも知れません。
ところで、この記事では、経済学者が「摩天楼の呪い」と呼ばれる学説について議論してきており、世界最高の高層ビル建設と、ほぼ同時期の金融危機との間には不思議と相関関係があるとする説を解説していますが、今、世界経済で最も重要でかつ最大のリスク要因は、中国の不動産市場だと指摘するアナリストがおり、その理由は2011~12年の2年間で中国が生産したセメント量が、アメリカが20世紀全体に生産した量を上回るとしています。
それだけ膨大なセメントを作り使ってきた訳ですが、これは鉄鋼も同じです。
今や年間8億トンとも言われる鉄鋼(粗鋼)生産能力となっている中国ですが、この8億トンの生産能力のうち稼働している設備は6億トン、そして国内需要は4億トンとも言われているのです。
最大で2億トンとも言われる過剰生産となっており、このうちの1億~1.5億トンが輸出に回されていると言われていますが、この1億トンは日本の粗鋼生産量に匹敵する膨大な量であり、粗鋼生産だけを見れば日本は「必要ない」となりかねない量なのです。
セメントも鉄鋼も装置産業であり、一旦設備を作ればそう簡単に破棄する訳にはいかず、結果、過剰在庫をさばくために永遠とビル・マンションを作り、空港を作り、道を作り続けるという政策が取られるのです。
(中国のGDPの半分がこれら投資支出によるものとされていますが、当然といえば当然なのです)
ところが今やこの投資が行き詰まり出してきており、建設も出来ない、設備は余り出してきている、人も余り出してきている、となりつつあるのです。
この膨大な余剰を消化させるために中国が進める『アジアインフラ投資銀行』がある訳ですが、果たして間に合うでしょうか?
超高層ビル建設の後には経済危機が続くとする「摩天楼の呪い」と呼ばれるジンクスがあると言われており、今、アジアでこの「呪い」が現実化する時期が近づいてきていると言えます。