アメリカ商務省は、中国、日本、ブラジル、韓国、インド、ロシア、イギリスの7カ国製の冷延鋼板製品が米国で不当に安く販売されているとして、反ダンピング(不当廉売)関税を適用すると仮決定しており、課税率は中国製が265.79%、日本製は71.35%となっています。
日本は新日鉄住金、JFEスティール等が対象となっており、今回の71%もの課税で事実上アメリカへの輸出ができない事態に追い込まれかねません。
また中国も265%という課税率であり、事実上アメリカ向け輸出ができなくなりその分他国に流れ込むことになりますので、鉄鋼価格は更に値下がりするという事態を招きます。
世界中で膨大な鉄鋼設備が余りだしてきており、ブラジルの大手鉄鋼メーカーも操業率が50%を下回っているところもあると言われている程であり、中国も2億トン以上が余っているとも言われており、世界中で鉄鋼が余っており、アメリカ市場が「閉鎖」となれば、残りの市場にこの余剰分が殺到することになります。
世界は過剰生産分をどうするのか、という極めて難しい問題に直面しつつあり、自国を守るのであればアメリカのようにダンピング課税を適用して外国製品を排除するのが最も簡単な方法と言えます。
トランプ候補が、「日本、中国がアメリカ人の雇用を奪っている」と名指しで批判している中、今回のダンピング課税仮決定となっておりタイミングが悪すぎます。
これで「だから中国と日本を叩き出せ」と言いだしかねないからです。
今の「トランプ旋風」が「日本叩き」に発展する余地は十分あり、極めて厄介と言えます。
しかもこれが「暴言」ではなく、商務省が下した事実(ダンピング)を裏付けにしての話となりますので、説得力を持つことになり、反対に中国・日本を非難しない候補は「売国奴」と言われかねない状況になるかも知れないのです。